← ガイド一覧

入居までに、実際いくら払うのか

募集に出ている賃料は、契約日に動くお金の一部でしかありません。何が積まれ、どれが返り、どれが交渉できるのか。仲介手数料の上限と、家賃に消費税がかかる場合まで。

公開 2026年8月22日 · 更新 2026年9月4日

月12万円の部屋を見つけたとして、そこに入るまでに払うのはいくらか。12万円ではありません。条件によって 30万円から60万円 まで開きます。

厄介なのは、その差が部屋の良し悪しとほとんど関係がないことです。決めているのは 募集条件のどこにゼロが入っているか だけで、しかもそれは探している段階で見える情報です。

積まれているもの

日本の初期費用は一つの手付金ではなく、性質の違う項目の積み上げです。分けてしまえば、どこが動いてどこが動かないかがはっきりします。

項目 よくある額 返るか
敷金 賃料1ヶ月分 退去時に原状回復費を引いて返る
礼金 賃料1ヶ月分、またはなし 返らない
前家賃 1ヶ月分+入居月の日割り 家賃そのもの
仲介手数料 上限が決まっている(後述) 返らない
保証会社の初回保証料 物件ごとに決まっている 返らない
火災保険料 2年分 返らない
鍵交換費 物件ごと 返らない

返らない項目の合計が、その部屋の実質的な入場料です。敷金は預けているだけなので、ここには入りません。

効くのは敷金と礼金の有無

いま掲載している44件で数えると、礼金なしが16件、敷金なしが10件、両方なしが8件あります。3件に1件は礼金なしで、珍しい条件ではありません。

積み上げると、こうなります。

  • 敷金1ヶ月・礼金1ヶ月の部屋 … 前家賃も入れて賃料の 4.5〜5.5ヶ月分
  • 敷金・礼金ともになしの部屋 … 2.5〜3ヶ月分

賃料12万円なら、前者は60万円前後、後者は33万円前後。同じ賃料の部屋で、27万円の差が出ます。

ここで大事なのは、礼金なしは値引き交渉の結果ではなく、その部屋がもともと持っている募集条件だということです。交渉する前に、条件欄で選べます。

仲介手数料には上限がある

賃貸の仲介手数料は、宅建業法にもとづいて国土交通省が告示で上限を決めています。貸主・借主の双方から受け取れる合計が、賃料1ヶ月分に1.1を掛けた金額まで

さらに居住用の建物には条件が付きます。片方から受け取れるのは賃料1ヶ月分の0.55倍までが原則で、それを超えるには、依頼を受ける時点で本人の承諾が要ります。実務では最初に承諾を取って1ヶ月分を受け取る形が広く行われていますが、承諾のないまま1ヶ月分を請求することはできません

もう一点、あまり知られていないことがあります。国土交通省は通達で、上限額を当然に請求できるわけではなく、具体的な額は依頼者と協議して決める事項だと明記しています。そして媒介契約を結ぶ前に、金額を説明して合意する必要があるとも書いています。

つまり手数料は、見積もりに出てくる前に話す項目です。最後に出てきた数字を黙って受け取るものではありません。

家賃に消費税はかかるのか

原則としてかかりません。住まいとして借りる家賃は非課税で、共益費(管理費)も家賃に含めて非課税、家具や照明、冷暖房設備のように住宅と一体で貸されているものも同じ扱いです。

ただしこの記事を読んでいる人には、例外が3つ効いてきます

1. 用途を事務所に変えると、そこから先の賃料は課税対象になります。 住宅として貸されていた建物を、契約当事者間で住宅以外の用途に変更した場合の扱いです。「事務所利用可にしてもらう」という交渉には、賃料が1割上がりうるという裏側があるということで、ここは事前に確認する価値があります。事務所とSOHOの線引きそのものは賃貸で働けるのか、法人登記はできるのかに書きました。

2. 家具を別契約にして賃料を別に定めている場合、その部分は課税されます。 見積もりに「家具レンタル料」が別行で立っていたら、そこには消費税が乗ります。

3. 貸付期間が1ヶ月未満のものと、旅館業にあたる施設は非課税から外れます。 マンスリーマンションやいわゆる民泊は、1ヶ月以上使っても対象外です。

管理費を賃料と切り離さない

掲載中の管理費は0円から28,000円まで、真ん中あたりが5,000円です。13件は0円で、賃料に含まれています。

賃料12万円+管理費1.5万円と、賃料13.5万円+管理費0円は、毎月出ていく額は同じです。ただし初期費用は同じになりません。敷金・礼金・仲介手数料はどれも「賃料」を基準に計算されるので、管理費が0円で賃料が高いほうが、契約時に払う額は大きくなります

募集を見比べるときは、月額は総額で、初期費用は賃料で考えてください。

見積もりが出たら見る3つ

  1. 返らない項目だけを足す。 それが本当の入場料です
  2. 仲介手数料の額と、承諾を取られた覚えがあるか
  3. 契約の用途が住居か事務所か。 消費税とその後の扱いが変わります

金額の話は物件・貸主・保証会社によって変わりますし、税の扱いは個別事情で結論が動きます。判断が要る場面では、必ず専門家に相談してください。

ここに載せている部屋は、敷金・礼金を条件欄でそのまま出しています。初期費用を先に決めてから探したい場合は、そこから見てください。

この記事は一般的な実務の説明で、法律・税務の助言ではありません。条件は物件・貸主・保証会社によって変わります。個別の判断は必ずご相談ください。

この記事に出てきた部屋